2025年4月09日
「低AMHは体外受精しかない」と言われてしまって悩んでいる方にこそ、読んでいただきたいお話。
当院で低AMHにもかかわらず、人工授精治療で妊娠卒業されていった患者様についてお話します。
Aさんは、34歳。不妊クリニックを受診するのは初めての患者さん。初診時の看護師カウンセリングでは、
「まずは検査してみて、タイミングを見てもらうかなあと思っています」
と話しており、不妊治療もまだあまり考えていないという印象の、不妊クリニックを受診する大多数の方とおなじ🔰でした。
不妊基本検査を1周期かけて実施。その結果説明の時には、ご自身のAMHが0.89(卵巣年齢では45歳以上)という低さに大変ショックをうけていました。
不妊期間が比較的短いこと、卵管造影検査で卵管の通りぐあいに問題がなく、精液検査でも異常がなかったことから、Aさんとも話し合い、人工授精治療を3周期行なって、それでも妊娠しなければ体外受精治療にしましょうという方針にしました。
もともと生理周期は28日周期で、周期の乱れのない方ですが、排卵誘発剤(卵をそだてる薬)や排卵トリガー(排卵をおこす薬)、黄体ホルモン補充(黄体機能の低下がある場合は着床率が上がるとされている)も行う、というしっかりタイプの人工授精治療を3回実施しました。最後となる3回目の周期には、並行して体外受精の準備(体外受精セミナーへ参加)もしていました。ところがなんと3回目のトライで妊娠が成立。その後の妊娠経過も順調で無事当院を卒業されていかれました。
AMH(卵巣年齢)は、45歳以上の方の平均値レベルでしたが、やはり卵のクオリティは実年齢(34歳)相当であり、人工授精治療で妊娠できました。
「AMHが低い=妊娠しにくい」ではないのです。「低AMHだからすぐに体外受精に進んだほうがよい」とはよく言われますが、それが当てはまる患者さんもいれば、そうではない患者さんもいらっしゃいます。個々の患者さんごとに、年齢や、不妊期間、もともと持っている疾患などなど、患者さんの背景を踏まえたうえでどの治療がその方に最適なのかを日々考えて診療にあたっています。
早めに受診、積極的に治療開始する、早めの時期に正しい治療をしていくことが大切なのです。